紺碧の海 金色の砂漠
ルシーア地方で静養中の前国王夫妻は、ようやく肩の荷を下ろすことができて、穏やかな日々を過ごしていた。

首都から届く定期報告の確認も側近任せ。前国王は決められた場所にサインをするだけ……。ダーウードの部下として長年勤めてくれた側近らに、前国王は全幅の信頼を寄せていた。

何も知らず、ミシュアル国王は不在中の裁定を王弟ラシード王子ではなく、前国王に任せてしまったのだ。

そのため、彼らはとんでもない権力を手にすることになってしまう。
 

その一方で、長老会議はリドワーン王子も焚きつけた。


『前国王はリドワーン王子を後継者にと考えていた。ヌール妃の策略でミシュアル国王が誕生したが、それでも前国王は最年長の孫であるリドワーン王子の手腕に期待しておられる。ラシード王子の補佐を任せたのが何よりの証拠』


リドワーン王子はミシュアル国王を恨んでいて、前国王を味方につけたいと考えていた。

ミシュアル国王を追い落とすつもりなどないが、前国王の口添えがあれば彼の希望が叶うかもしれない。


長老会議の後押しもあり、彼はそのために“前国王の命令を忠実に遂行”しただけだった。 



「無論、多少は怪しんでいたのだろうが……。奴は優秀だが、簒奪してまで王位を欲するような気質ではないからな」

「でも……だったら、リドワーン王子って何がしたかったわけ?」

「……」
 

それは第三夫人の一件だった。


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