紺碧の海 金色の砂漠
どうやら彼は、ミシュアル国王とだけケンカしているという訳じゃないらしい。


『国を出て以降、一度も会わずに万一のときは、お前が後悔するはめになるぞ』

『もとより承知。――このたびのこと、陛下がご無事で本当によかった。一日も早く、男子が授かりますことを祈っております』


そう言うと、笹原は深く頭を下げた。


(なんか……早く切り上げたいのが見え見えっていうか)


彼は順番に頭を下げながら騎士の間を出て行こうとした。

そして舞の前に来たとき、


「あなたほど王妃らしからぬ王妃は知らない。だが今回は……あなたの勝ちだ」


日本語でささやき、静かに頭を下げる。

舞はとっさに押し殺した声で「あ、ありがとう……助けてくれて」そう伝えた。

声をかけられたことに笹原は驚き、そして、呆れたように小さく笑う。


『アッ・サラーム アライクム(あなた方の上に平安がありますように)』


最後の言葉はアラビア語の決まり文句だった。


< 236 / 243 >

この作品をシェア

pagetop