紺碧の海 金色の砂漠
この騒動を“小さなアクシデント”と言い切るレイ国王。

しかも、それにうなずいている大臣や補佐官たちって……。


(アズウォルドって小さいのに、太っ腹な国民性だよねぇ)
 

アバヤに身を包み、感心する舞であった。



騎士の間は人払いがされ、笹原が通された。

舞はあらためてじっくりと彼を見る。兄弟は琥珀色の瞳以外は全く似ていない。逆に言えば、瞳の色だけは全く同じだった。


(ヌール妃って黒だっけ。前の国王さまは、ラシードと同じ濃いブラウン。いったい、どこからこの琥珀色の瞳はきてるんだろう?)


『陛下がご無事で何よりです。願わくは、二度とこのような事態にならぬよう……アッラーに祈ります』


もうひとつ同じ点。この声は瞳の色以上によく似ている。

ひと回り小柄……といっても一八〇センチはありそうだけど。日本人らしい肌と髪の色、美男子(イケメン)だけどアラブ特有の彫りの深さはなく、全体的にスッキリしている。

ジャンビーアより、日本刀が似合いそうなイメージだ。


『我が妻に求婚を断られたらしいな』

『はい。幸運なことに』


弟の言葉にミシュアル国王は少し眉を動かし、


『……まあ、よい。だが、父上もお歳だ。心臓に問題も抱えている。一度くらいは戻って参れ』

『父上がお喜びにはなりますまい。私は不肖の息子ですから』


笹原の瞳が曇る。


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