紺碧の海 金色の砂漠
舞が正義感に燃え始めたとき、“ムギチャ”を出してくれた女性とは別のメイドがやって来た。

見た目は日本人のようで、舞より若く思える。彼女は緊張した面持ちでトレイを抱え、温かいカフェオレをテーブルに置いた。


「マイの好きな飲み物だと聞きました。間違ってなかったかしら?」

「あ、はい! 実は甘い物大好きなんです」

「私も好きよ。チョコレートも大好き。でも太りやすい体質だから、注意しないと……マイはどう?」


決して太っているとは思えないティナだが、二の腕辺りを気にしながら笑う。


「わたしの場合、元々が細くはないので……」


肉付きというより、舞は骨格がしっかりしていた。無論、付くべき所にはしっかり付いているが、ちょっとしたことで太るという体質ではない。

全体的にフワフワしていて女性らしい印象のティナのほうが、脂肪が付きやすいのかも知れない。


ふたりはトレイドウィンド市内の美味しいケーキ屋さんや、色んな島で取れるフルーツの話に花が咲き、舞は久しぶりにたくさん話した気がした。


シャムスとも日本語で話せるが、うっかりムスリムとは違う考え方を口にしようものなら……最近では遠慮なしに説教されてしまう。

義理の姉妹とはいえ、ライラには決して気を許すことはできず。

日本では桃子と会えたが、会話には聞き耳を立てられ複雑な心境だった。それに政府や国の対応に裏表が見える分、故郷とはいえ寛げる滞在ではなかったのだ。


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