紺碧の海 金色の砂漠
ティナとは身分の差もなく、彼女も結婚前はアメリカの一市民だったという。

それに、アズウォルドに漂う空気はとても自由で、女官や護衛官、一般国民たちからも悪意や敵意が感じられなかった。


セラドン宮殿をあとにするとき、舞は思っていたことを尋ねてみる。

はじめに通された王宮の国賓室もこのセラドン宮殿でも、舞が見かけるのは女性ばかりだ。

王宮敷地内を車で移動する際の運転手も、玄関前に立つ警官も全て女性。


「これって、わたしの為ですよね? お気遣い頂いて……本当に嬉しいです」


舞はティナに感謝を伝えた。

すると、ティナはクスッと笑い、「手配したのはこちらですけど……」


――アラビア風の歓待は遠慮する。正妃の過ごしやすい環境を整えてやって欲しい。その代わり、我が国の侍従や女官はほとんど同行しない。そちらの国風に従う。


ミシュアル国王がレイ国王に直接話を通したのだという。

帰ったら文句を言ってやろうと思っていた舞だが、ちょっと拗ねるだけにしておこう、と思い直す。

ベッドの上で、「ティナのこと無視するなら、アルとは一緒に寝ない!」とか言えば彼はどうするだろうか。

行きとは逆に、かなり浮かれた様子で王宮正殿に戻る舞だった。


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