紺碧の海 金色の砂漠
砂漠の結婚式から一ヶ月以上が経っている。もし初夜で授かれば、妊娠が判明しても遅くはない時期だった。

舞の場合――終わったばかりで可能性は皆無だ。ハネムーン中だし、焦る気持ちは全くなかったが……。


でも、まさかこんなに早く、ライラが妊娠するなんて思ってもみなかった。


「ミス・カリノ! あなたは仕事もせず何ということを……。すぐに下がりなさい!」


呆然と立ち尽くす舞の耳にスザンナの叱責が聞こえた。

それはこの国独特の英語で、舞にも何となく判る内容だ。アメリカやイギリスの英語に比べ、日本人の耳でも聞き分け易い英語の発音であった。


「あ、スザンナ、そんなに怒らないで。わたしは別に」


舞は日本語で声をかける。

するとスザンナもパッと日本語に切り替え、


「いいえ。王宮でご懐妊を話題にするなど……新人に徹底できなかった私の失態です。本当に申し訳ございません」


体をふたつに折るほど深く頭を下げたのだ。

ライラの件はビックリだが、このスザンナの反応にも驚く舞だった。


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