紺碧の海 金色の砂漠
「これは私の意見ではないことを承知で聞いてくれ。アズウォルドやアメリカのマスコミを中心に、こんな噂が出ているのは確かだ。――王妃の不妊は、過去の性体験や堕胎が理由ではないか、と」


舞は瞬時に頭に血が昇った。


「何それっ! 本気で言ってるの?」

「私ではない。断じて私の意見ではない! そう言ったニュアンスの記事を見たと言っただけだ」

「じゃあ、レイは? そんなヨタ話を信じて夫婦仲が上手くいってないの!?」
 

思わず、他国の国王を呼び捨てにしてしまった。

ミシュアル国王のことは言えない。女官や警備兵の耳に入ったら大問題だ。

クアルン王妃としての良識は『他国のことに踏み込んではいけない』と警告を発していた。

だが、ティナの姿を思い出すと舞の怒りは納まらない。


アズウォルドがオペックに正式加盟できるように、とティナは泣くように頼んできた。

自分の存在がミシュアル国王の機嫌を損ねるようなら、彼の前には出ないとまで言ったのだ。あんなに美人なのに偉そうでもなく、本当のお姉さんになって欲しいくらいである。


今日一日で舞は完璧にティナの味方だった。


「落ちつけ。レイは妃を大切に扱っている。だが、王族にとって後継者の問題は避けては通れない道なのだ。レイはすぐ下のソーヤに王位を譲ってもいいと思っているようだが、国民感情と言うものもある」


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