紺碧の海 金色の砂漠
このアーロン王子が、今のアズル王室の後継者問題を複雑にしていた。

現在、王位継承権一位はソーヤ王子、二位がアーロン王子だ。しかし、皇太子の地位は空席のままであった。それにはもちろん理由がある。

何とアーロン王子の実母が息子の親権を求めて、レイ国王相手にアメリカで裁判を起こしている。しかも、その実母がリューク王子の娘というのだから……王室にとったら一大スキャンダルだろう。

とはいえ、新婚の国王夫妻に子供が生まれたら、王子も王女も関係ない、文句なく継承権一位になる。そうなれば後継者問題は自動的に決着する、と国民の誰もが思っていた。



「それがずっと持ち越されてるんだ……だから、スザンナもピリピリしてたのね」


舞は得心がいったようにうなずいた。


「レイは気にするような男ではない。だが、周囲はそう思わないだろう。特に妃の過去に問題があるとなれば……」


口にした瞬間、ミシュアル国王は眉を顰めた。それは、明らかに『しまった』という表情だ。


「ティナの過去に何も問題なんてないでしょう! ここはクアルンじゃないし、アルの王妃にするわけでもないんだから。外交問題に発展したらどうするのよ! 冷静に対応してよねっ」


ミシュアル国王は降参のポーズを取りながら、舞を手招きする。片膝を立てソファにどっかと座り、自分の脚の間に舞を座らせた。


「それはお前の言うとおりだ。レイにも注意された。私も自分の立場は心得ている。クリスティーナには礼儀正しく接することを約束する」


全面的に同意され、舞にしたら肩すかしだ。


(なんか不気味なんだけど……何か企んでないよね?)


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