紺碧の海 金色の砂漠
一斉に“貴婦人の間”は静まり返り、全員がポカンと舞を見ていた。

一応、通訳の女性は舞の横に待機している。しかし彼女は青褪めていた。どう訳していいものか、困っているらしい。


(そ、それもそうか……訳されたらヤバイかも)


「全てがアッラーの思し召しです。申し訳ありませんが、イスラムではそういった話題は禁じられております。これ以上続くようなら、わたしは退出しなければなりませんが」


舞が挑戦的な笑顔を作ってそう言うと、さすがのチカコも黙り込んだのだった。



「アーイシャ殿下。さきほどのイスラムの掟はお見事でしたね」


予定されていた歓談の時間が過ぎ、舞は王宮の庭でミシュアル国王の帰りを待っていた。

この国はいたる所に緑と水が溢れている。日本も豊かだが、それ以上だ。満点の星を見上げつつ、マイナスイオンを胸いっぱいに吸い込んで、舞は庭の噴水を見ていた。

そんな彼女に話しかけたのが、レディ・アンナだ。

身長は舞と遜色ない。真っ黒の髪を肩までで切り揃え、額の中央で綺麗に分けていた。母親のルシール王女にはあまり似ておらず、東洋人ぽい顔立ちをしている。


「えっと……レディ・アンナでしたね。まさかとは思いますけど……アラビア語は」

「少しだけ」


そう言うとクスッと笑った。どうやらハッタリに気付かれたらしい。


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