紺碧の海 金色の砂漠

(11)愛と怒りの女神

(11)愛と怒りの女神



――アジュール島・アジア国際図書館オープニング記念式典――

と書かれた横断幕の前にティナと舞は並んで立っていた。

舞はもちろんフル装備だ。大勢のマスコミがカメラを構えて並び、テレビ局も来ているという。そんな中で舞が素顔を出せるはずがない。

この図書館は司書であるティナが設立に携わったものだった。


元々、彼女がこの国に招かれた理由が「新しい図書館の設立に向けて」というもの。単なる建前だが、それは言えない。

この国にはすでに蔵書一千万冊を誇る国立図書館があった。それと区別する為に、アジア各国の本に限った専門的な図書館を設立したのである。


アジアの中でも、東アジアに関する全てがここに揃っている――そんなことを教育省の女性大臣が、ティナと舞の横で来賓やマスコミに向かって話していた。
 

それを訳してくれる女性に視線を向けつつ、さも聞いていますとばかり舞は頷くが……。


(アルの馬鹿っ! 何よ、冷たいことばっかり言って。勝手にしたらいいじゃない!)


頭の中にはミシュアル国王に対する文句ばかり浮かんでくるのだった。


~*~*~*~


「彼らの問題は彼らが解決する。お前は余計なことをしてはならぬ」


スッパリ言い切ると彼は舞に背を向けた。

確かに、ミシュアル国王の言う通りだろう。他人がどうこうできる問題じゃないのは、舞も承知している。


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