紺碧の海 金色の砂漠
だが、悩みは言葉にしたり、誰かに聞いて貰うだけでも心が軽くなるものだ。アメリカの一市民だったティナがアズウォルドの王室に嫁ぎ、たった一人の味方であるレイ国王との仲が気まずくなれば……。

舞にはとても他人事なんて思えない。

それこそ“明日は我が身”である。


「国内の内戦だって、解決する為に国連とか他国が介入することもあるじゃない! 色々言われて、本当にティナは辛そうなの。それだけでも伝えてくれたっていいでしょう?」


舞の言葉に、ミシュアル国王は大袈裟なほどため息を吐く。


「レイはそれに気付かぬほど愚かな男ではない。クリスティーナは夫の指示に従わず、問題を大きくしているに過ぎぬ。王妃の自覚を持つよう、伝えるがよい」


それには舞もカチンときた。


「なんでそうなるのよっ!? じゃ、私に子供が産まれなかったら、アルも同じように言うんだ!」

「……他人の苦しみを我が事のように思うのは、お前の長所であり、欠点でもある。舞、間違っても他国で面倒は起こさぬよう。よいな!」


何が一番頭にくるかと言えば……。

新妻のお願いを素気無く跳ね返しておきながら、ベッドの中ではしっかり手を伸ばしてくるのだ。


(一体、どういう神経してんのよっ!)


< 56 / 243 >

この作品をシェア

pagetop