紺碧の海 金色の砂漠
ソレはソレ、コレはコレ、にも程がある!

舞が無視すると、今朝は一言も話さず公務に出て行った。


それだけじゃない。


『今朝の陛下は随分ご気分を害されているご様子。閨室《けいしつ》で陛下のお心を損ねるなど、妃にあるまじき失態。ラシード殿下はクアルン女性を娶り、アッラーのご加護をいただいて早々にお子に恵まれました。この分ですと、ご帰国と同時に第二夫人を娶っていただくことになりそうですな』


側近ダーウードは、自慢の髭を撫でながら舞に言う。

そのふんぞり返った態度は、王子を産むまでは正妃として認めるもんか! ということらしい。


しかも、少し距離が離れていたとはいえ、ミシュアル国王の耳にも入ったはずなのだ。なのに、彼は何もフォローしてくれなかった。

それに気付いたとき、舞の怒りは沸点に達したのである。


~*~*~*~


「……妃殿下。アーイシャ妃殿下。テープカットでございます」


女性通訳の言葉に舞はハッとする。

慌てて笑顔を作り、手にしたハサミでティナと同時に目の前に張られた紅白のリボンをカットした。後から、笑っても誰にも見えないことに気がつく舞だった。


< 57 / 243 >

この作品をシェア

pagetop