紺碧の海 金色の砂漠
直後、紺碧の瞳が冷ややかな視線を怒声の主に向ける。


「――では、宮殿の監視カメラで確認したんだな。使用人の車を運転していたのは、アーイシャ妃である、と」

「……!」


(どうしてお前が出奔する! 私が何をしたというのだっ!?)
 

吹き付ける潮風に眉を顰めるミシュアルであった。
 
 

レイがあの情報を知ったのは、舞たちが観ていたテレビ番組の放送直前のこと。


「困ったことになった……」


国務省報道室から緊急連絡と聞いたが、その報告を受けた直後、レイが青褪めてミシュアルの前に座り込んだ。そのままテーブルに置かれたコーヒーカップを手に取り、一気に飲み干す。


「……」


ミシュアルは、レイの動揺に驚いていた。

なぜなら、レイが飲んだのはミシュアルのカップで、入っていたのはクセのあるアラビアコーヒーだ。

緑茶を好み、コーヒーもアメリカンにするというレイである。何事が起こったのか、ミシュアルも自然と緊張を高めた。

 
「ハリウッドのある女優が、未婚の母になるというんだ」

「……それがどうした?」


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