紺碧の海 金色の砂漠
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「ねぇマイ……あなたまで出て来なくても……」
 

さっきから何度となくティナが口にしている言葉だ。

しかし、動揺しながらも「私は大丈夫だから、一人になりたいだけだから」そう言って宮殿から出て行こうとした。

そんな彼女を、舞は黙って見送ることが出来ず……。


アバヤを脱ぎ捨て、女官の私服を借り、舞は一見すると“日系アズウォルド人”に早変わりである。

そして、ちょうどその女官が乗っていた日本製の軽四自動車まで借りた。

二人の王妃に詰め寄られては、女官も逆らえないだろう。


それに――『無断で借用します。女官のせいじゃありません。舞』と、日本語で書き置きも残してきた。


(アルってば、あの女官を罰したりしないよね……それだけがすっごく不安)


「マイ、ミシュアル陛下が心配すると思います。やはり、引き返しましょう」


舞のことを気にして、ティナは戻ろうとまで言い始める。


「ティナはそれでいいの? もし、本当にレイ陛下の子供だったら……」

「その時は私はこの国を出るわ。離婚の手続きだって、レイがその気になれば出来るはずよ。彼は……庶子は作らないと言っていたから……きっと」


そう言うとまた涙をこぼし始める。



あの放送を見た時、「まっさかぁ~そんなことありませんよね~」と舞は必死で笑った。隣に座るティナが見る見る蒼白になっていったからだ。


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