紺碧の海 金色の砂漠
公用車を無断拝借したら、後々問題が大きくなるかも知れない。舞がそう言って、自分が運転しやすい軽四を選んだのだ。

とはいえ、このスコールの中、万に一つも海まで流されてしまったら洒落にならない。

アズウォルドのビーチに憧れて、泳ぎたいと思ったのは確かだ。しかし、この状況で海に放り込まれるのは勘弁して欲しい。


「とりあえず、コテージの中に戻りましょう。こういう時に動くのって危険ですよ。着替えて救助を待ちましょう。雨が止んだら、こっちから車で引き返してもいいし」


その直後、舞とティナの耳にギシギシと妙な音が聞こえてきた。

舞が周囲を見回すと、どうやら自家発電機の置かれた小屋から聞こえてくる。


「ね、え……ティナ。コレって何の音?」

「わからないわ。マイ、急いで戻りましょう」


ティナに急かされ、舞がコテージに向かう階段に足を掛けた時だった。


ふたりの背後で掘っ立て小屋の壁が、内圧に耐え切れなくなったようにメリメリと壊れ始め――。

次の瞬間、水の塊が竜のようになり、ふたりに襲い掛かった!


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