紺碧の海 金色の砂漠
昼間に見た美しい紺碧の海とは違い、海と空の区別すらつかない真っ暗闇である。

ミシュアルにしてみれば、海中を行くくらいなら多少地面が危うくとも森の中を進んだほうがマシだと思える。

だが、これが海洋の民というものなのだろう。ミシュアルたちが自らを砂漠の民と称するように。


納得できないまでも、理解しようとする彼にレイが言った。
   

「シーク・ミシュアル。どれほど遅くなっても、あと数時間でこの雨はやむ。このハイドレンジアにはヘリが搭載してある。やみ次第、君はヘリで入り江のコテージに向かってくれ」


レイの言うことはわかる。

だがミシュアルより先に、彼らが舞の元に駆けつけるのを、黙って見ているわけにはいかないのだ。

そして同じ国王であるレイにできることを、できないと口にするのは恥であった。
 

「馬鹿を申すなっ! アーイシャを救う権利は私のものだ。他の誰にも譲るつもりはない。さあ、私の分の潜水服を用意してもらおう!」

「いや、それは……」
 

口籠もるレイを無視して、体格の似た男を捕まえると「その潜水服を私に寄越すのだ」と奪い取る。

およそ海軍の兵士かプロのダイバーと言った辺りだろう。一国の国王に命じられては“ノー”とは言えない。


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