紺碧の海 金色の砂漠
周囲をキョロキョロ見回すが、舞より先に逃げられたはずがないのだ。と、いうことは……。


「ティナ! ねぇ……返事してよ。やだ、何でいないの? ドコに行ったのよぉ……ティナ……ティナーーッ!」


恐る恐る、舞は這い上がってきた方に戻る。

雨の激しさは変わらないが、小屋の壁を突き破って吹き出した水は少し弱まっていた。

数秒間躊躇った後、舞は階段を下り始める。


――ひょっとしたら、あの水圧でティナは木か壁にぶつかり、意識がないのかも知れない。


その時はすぐにコテージに運び込み、無事な方のベッドに寝かせて、自分が助けを呼びに行かないと。

舞は気丈にも良い方向に考えるが。


――だけど、もし、周囲を探してもいなかったら? もし、海に流されていたとしたら?


(どうしよう。わたし、どうしたらいいの? アル……アル、お願い、一生のお願い。二度と我がまま言わないから……助けに来て。ティナを助けて)


舞は胸の中で懸命にミシュアル国王の名を呼び続けた。


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