白の恋
湯月はそれから名前を呼ばれる度に、壊れたオモチャのように涙を流すようになってしまった。


だから僕は”湯月”と呼ぶのをやめた。



僕らはもう、この世に
肉親のいない二人になってしまった。


二人はひとりぼっちだ。


でも二人は一緒だ。


僕は湯月で、湯月は僕だ。


もう湯月と僕の名前を呼ぶ
肉親はこの世に存在しないから…


『……真白……』


一度だけ、ボソリと
聞こえないくらいで言った。





そしたら湯月は
僕をまっすぐ見た。






それはまるで自分の名前を呼ばれたかのように

ただ僕をじっとみて、

何かを待ってるように思えた。




…喉はなぜかカラカラだった。




『……湯月、
今日から湯月を”真白”と呼ぶよ。』


湯月の澄んだ瞳が僕を捉える。


湯月は今まで見たこともないくらい
安心に満ちた幸せそうな笑顔で笑った。



そして湯月は僕を”湯月”と呼ぶようになった。



僕らはもう離れることはないだろう。



湯月は僕で、僕は湯月…



世界でたった二人ぼっちの世界で

生きていくんだ。
< 48 / 48 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

realize

総文字数/33,329

恋愛(純愛)118ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
Realize ~悟る いつまでも甘く温かな場所で あなたとずっと生きていけたら どんな幸せを感じられるんだろうか "3時間彼女"のひと夏の誘惑
恋しても、愛しても、夢は見ないから

総文字数/30,697

恋愛(純愛)119ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
いつもどこか孤独だった。 愛なんてくだらないと思ってた。 あの日、雪が降らなければ 知り合うことなんてなかったから。
僕が彼女といる理由

総文字数/37,038

恋愛(その他)84ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
男と女の友情。 僕はあると思っていた。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop