龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
「それなら美術の方がよかったんじゃない?」

わたしがそう言うと、亜由美が意味ありげに美幸を見た。


「でもねぇ」

美幸は大きくため息をついた。

「絵のモデルは三毛猫だったのよ――ああ、もう。笑いなさいよ」


「ご……ゴメン。でも、おかしい……」


「残念ね。実際の絵を見たらもっと笑えたのに」


亜由美、やめて。

おかしすぎる。


笑いながら階段に差し掛かった時、フワッと桜の匂いがした。


思わず足を止めて振り返った。


廊下の窓は閉まっている。


「志鶴? どうかした?」

階段の途中で、美幸と亜由美がわたしを見上げていた。


「ううん。何でもない」


わたしは階段を下りようとした。


その時、

ドンと背中を押された。

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