龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
体が前に揺れた。


とっさに手摺りを掴んだけれど、右足の裏が階段の角をズルッと滑ってしまった。


落ちる――そう思った瞬間、不思議と全てがスローモーションのように見えた。


わたしの後ろに小さな女の子がいた。

あれは誰?

桜色の着物を着て、無邪気に笑っている。


美幸が悲鳴を上げ、亜由美がわたしの方に手を伸ばす。

ダメだよ。亜由美まで巻き込まれちゃう。

わたしは亜由美の手を避けるように体を捻った。


「しづ姉(ねえ)!」

階段の下に大輔くんがいた。

大輔くんは、持っていた物を全部放り投げて、手をパンッと打ち鳴らした。

「止まれ!」


止まれって――あれ?

わたし、浮いてる?


「大輔! 堪えろ!」

わたしの真横にいきなり悟くんが現れた。

悟くんはわたしの腰を抱き抱えると、そのまま下に向かって跳んだ。


うぎゃ―――っ!

< 103 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop