龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】

「だから大丈夫だってばっ!」


「念のためだよ、ね?」

圭吾さんが、宥めすかすように言った。


周りの人がチラチラとこっちを見てる。

総合病院のロビーで言い争うのもどうかと思うけど、わたしを救急外来に連れて行こうとしている圭吾さんもどうかしてる。


「せめて座ってくれ」


「いや」

わたしは立ったまま、腕を組んで言った。


足は痛かったけれど、座ったら最後、圭吾さんは勝手に受付に行ってしまう。

騙されないんだから。


「圭吾……さん? こんにちは。どうしたの?」


女の人の声に、わたし達は振り返った。

女の子のわたしでもドキッととするほど綺麗な笑顔が、わたし達を見ていた。


わっ! 優月(ゆづき)さん?!


羽竜優月さんは、司先生の奥様。

そして、圭吾さんの元恋人なのだ。


いつ見ても、本当に美人だなぁ

おまけに優しいし、賢そうだし

天は二物も三物も与えるんだ……ずるい

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