龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】

一瞬、何が起きているのか分からなかった。


悟くんがわたしに背を向けて、廊下の真ん中で足を踏ん張るように仁王立ちになった。


「どれでもいいから、うちの兄貴に電話して!」


悟くんの声が切羽詰まっている。


「承知いたしました――さっ、志鶴様」


和子さんは、お婆さんとは思えないくらい強い力でわたしの脇を抱えると、えっちらおっちらと走り出した。


まるで二人三脚みたい……


新しい遊びだと思ったのか、ペロが走ってついて来た。


廊下の角を曲がって少し進むと、後ろの方から何かが爆発するような音がした。


「悟くん?!」

大きな声で呼んでみたけれど、何の返事もない。

「和子さん、悟くん怪我したかも」


「分家に電話するのが先でございます。私共ではお手伝いにもなりません」


和子さんの言う通りだ。

わたしが無事であること、それが悟くんの助けになる。

泣きたい気持ちを抑えて、わたしは痛む足で歩こうとした

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