龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
「志鶴? そこにいるのか?」


廊下のずっと向こうから、ずっと待っていた人の声がして、

安心して、

わたしは唇を震わせた。


泣いちゃダメ

グズグズ泣いたって、悟くんは助けられない。


「圭吾さん、早く! 悟くんを助けて!」


圭吾さんと、警官の制服を着た要さんが走って来る。

圭吾さんが抱え込むようにわたしを抱きしめた。


助けて 助けて 助けて

友達なのよ

悟くんを助けて


和子さんが素早く状況を説明すると、要さんが悟くんのいた方に走って行った。

わたしは両腕をグイッと伸ばして圭吾さんの体を押しやった。

溢れる涙を手の甲で拭う。


「行って。悟くんを――わたしの親友を助けて」


圭吾さんは片手で、髪をクシャクシャにするようにわたしの頭を撫でた。


「ここで待っていなさい」

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