龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
「花見? まだ咲いてる桜があるの?」


「花はないんです」

わたしは勢い込んで言った。

「もうすぐ切られる木があって――樹齢三百年の桜なんですけど、枯れかかってるから花は咲かないんです。でも、長年みんながお花見をしてきたから、最後にみんなで見送ろうと思うんです」


「素敵だね」

片桐先生はニッコリと笑って言った。

「それ、どこなの?」


わたしは地図を書いたカードを差し出した。


「お友達も誘って来て下さい! お弁当はこちらで用意してます!」


「ふふ、ありがとう。そりゃ是非ご馳走になりに行かなきゃ」


やった!


「じゃあ、わたしはこれで。もう一人、誘う人がいるんで」

わたしは立ち上がった。

「土曜日、絶対来て下さいね」


「はいよ。また遊びにおいで」


わたしは一礼して保健室を後にすると、階段を上った。


さて、と

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