龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
「それに大人になれば、人の気持ちが思い通りにならない事を理解できるようになる」


圭吾さんみたいに?

理解できたって、悲しい思いをするのは同じでしょ?


「わたしは――」

声がかすれて咳ばらいをする。


圭吾さんが目を上げてわたしを見た。


「圭吾、兄貴の車が来たぞ」

巧さんが呼んだ。


「今行く――ちょっと荷物を下ろすのを手伝って来るよ」


わたしは頷いて、圭吾さんの背中を見送ろうとしたけれど――


「圭吾さん!」


宙に浮いたままの言葉を伝えたい。


圭吾さんが振り向いた。


「わたしのは本気だからね」


圭吾さんは微笑んだ。


「そうでなくては困るよ」



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