雨が見ていた~Painful love~


「3週間前までは“優勝間違いなし!”だったのに…、スランプって怖ぇよな。」


「あの怪物にもスランプがあるってコト自体がビックリだけどよ。」




ハァ~とため息を吐きながら話す男の子たちの言葉を聞いて、キョウちゃんが不調っていうのは本当なんだと今更ながらに実感する。





それを聞いて、心の中に生まれてきたのは、憐みでも悲しみでもなく…ただの“怒り”





――何やってるのよ、キョウちゃん!!





後輩(であろう人)にこんなこと言われて、平気なワケ!?


どんな時でも俺様で、唯我独尊、有言実行の男がアンタでしょーが!!


同情されるなんて、キョウちゃんには似合わない。


どんな時でも俺様で、王様で、みんなの支配者みたいにふんぞり返ってるのがキョウちゃんにはお似合いなんだよ!?




不調?

スランプ??

なんでそんなことになってるのよっ!!




私はイライラしながら、ヒールのかかとを鳴らして歩き出す。





この建物には不似合いなスーツにヒール。そんな姿の私が珍しいのか、それとも“あ!あの人プールに落ちた人だ!”とでも思い出したのか、学生たちは私をジロジロ見つめるけれど、そんな視線、あの時の私には何も関係なかった。



ただ…腹がたったんだ。



そんな情けない状態に陥っている、キョウちゃんに。




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