雨が見ていた~Painful love~


紺色に光る空を見ながら、煌々と照明の光る帝体大のプールを目指す。



プール放り投げ事件から、約3週間。
近づくことはおろか、足を運ぶことすら恐怖の対象だった帝体大のプール。




――もう金輪際ここには来たくない!!




って思ってたクセに、こうして足を進めている私って…。自分が思ってるよりずーっとしたたかで、図々しくて、随分打たれ強い性格してるんだなぁ……としみじみ思う。




まぁ……こういう性格じゃなきゃキョウちゃんのワガママに付き合いきれない、ってだけなのかもしれないけどねぇ…。




自分のかわいげのない性格を実感しながらテクテクと帝体大のキャンパスを歩いていると、プールから香る塩素の香りがし始めて、目の前には帝体大の温水プールがある建物が現れる。




近代的な建物の玄関をくぐって、受付で名前を書いて。この世の悪魔・藤堂響弥のいる温水プールを目指す。




キョウちゃんが絶不調だなんて、本当に信じられないニュースだけれど…郷田先生があそこまで言うってことは本当なんだろうな…。





思いを巡らせながら温水プールに続く廊下を歩いていると、




「ってかさー、響弥さんヤバくね?」


「あぁ…絶不調だよね…。
フォームも何もかもがバラバラだし、泳げば泳ぐほどダメになっていくってあのことだよな…。」


「怖いよな~…。
あんな人でもスランプってあるんだな~…。」




ジャージに身を包んだ男の子達が、本当に心配そうにこんな言葉を口にする。






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