雨が見ていた~Painful love~



もー!
また意地悪するつもりだな!このオトコ!!


『もう~、やめてよ!!』


そのいつもの軽い拒絶の言葉は…
真剣なキョウちゃんの瞳に吸い込まれて
空気の中に溶けて消えてなくなった。




キョウちゃんは…



今まで見たこともないような真剣な瞳をして、私のカラダを強引にグイッと引き寄せると



「なぁ、美織。」


「な、なに??」


「…想像したのは…こういうコト…??」


「……!!!???」



私の唇に
そっとそっとキスをした。






触れるだけのキス

一瞬触れただけの短いキス




柔らかで冷たい
彼の唇がただ触れるだけのキス





ただ…それだけだったのに
事故みたいなキスなのに
私はありえないぐらいドキドキしてた。






――な、なんで…!?






あの時の私はどうかしてたに違いない。
いつもなら思いっきりビンタして

『な、なにするのよ!!!
キライキライ!大っ嫌い!!』

思いつく限りに罵ってやるところなのに…




私はされるがまま
抵抗できずに
信じられない気持ちで彼を見つめていた。



そんな私を見て


「…調子狂うな…。」

「…へ??」

「抵抗…しねぇの??」


キョウちゃんは『わからない』とでも言いたいように、首をひねる。


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