雨が見ていた~Painful love~


水面は穏やかで
揺れ一つない、水泳場のプール


どこまでも青く
どこまでも澄み切ったこの水の中で、キョウちゃんは泳ぐんだ。


誰よりも速く
誰よりも強く
自分の誇りと名誉をかけて、キョウちゃんは泳ぐ。




女子200M自由形
男子200M自由形の予選を終了して


やっと登場するのが200M平泳ぎ予選





予選にエントリーしているのは59人
この予選のタイムの上から順番に選ばれた16人が、次の準決勝へと進んでいく。


「わっ!見て!喜多川くん!
高校一年生もいるよ!!?」


渡されたパンフを見るとそこには出場選手の名前と年齢・所属先(大学名・企業名・もしくは所属スクール)が書かれていて。


そこに並ぶ高校生達に驚いて声をかけると


「わっ!すげぇ!」


喜多川君も同じように感嘆の声を上げる。





競泳素人二人がのほほ~んとしながら、『すごいねぇ~』なんて言いながら話をしていると


「そりゃそーだろ。
オリンピックで中学生が金メダル取った時もあるんだから。」


私の背中のほうから、聞きなれた低い穏やかな声が聞こえてくる。




――この声は……




「拓真くん!!」


「キラの応援に来たらアンタの姿がみえたから…、遊びに来た。」





後ろを振り返るとそこには、優しい優しい拓真くんの姿があった。


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