雨が見ていた~Painful love~


そして迎えた、日本選手権・当日――……



その日は怖くなるぐらいの青空で
雲一つない晴天の朝だった。



――いよいよ…だ。



私はドキドキしながら喜多川君と一緒に東京辰巳国際水泳場に足を運んでいた。



綾音も誘ったんだけど……。


『その日は忙しいから、ゴメン』


と言って、アッサリと断られてしまった。





半円が重なり合うような近代的な白い建物。これが数多くのスイマーが次々と記録を更新し続けている、スイマーの聖地、東京辰巳国際水泳場だ。



ドキドキしながら中に入ると、関係者らしき人と観客がひしめき合い、レース直前の独特な緊張感とわくわく感が建物全体を色濃く染めている。




キョウちゃんがエントリーしているのは200M平泳ぎ




本当は100M平泳ぎにもエントリーする予定だったみたいだけど…絶賛大不調の波を受けて、急きょ得意な200Mだけに専念することにした、と郷田先生から伺った。




日本選手権は約一週間という長い期間をかけて開催される大会だけれど、今日は大会二日目。前日の100M平泳ぎでは吉良光太郎が優勝をしている。




「吉良光太郎、よかったね。100M優勝できて。」




水泳場の観客席で
隣に座っていた喜多川君に声をかけると




「まぁね…。
でも藤堂不在の100Mなんだから、順当っちゃ順当なんじゃない??」




変なところで冷静な喜多川君はニコリともせずにこう答える。





「勝負は…ココでしょ。
藤堂のいる200Mでキラがどう戦うか。METSERAが見てるのはソコだろうから、今日がキラの正念場だな。」




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