NY恋物語

さっきまでの凍えてしまいそうな寂寥感が嘘のように、今が楽しくて暖かい。
自分がゲンキンで変わり身の早い節操無しのように思えなくもないけれど
きっと鳳の言うように、彼が「今」の私にとってのヒーローなんだろう。
ハンサムで明るくて元気で爽やかで
ちょっと可愛い、ヒーロー。


でも・・・
比べてしまう。


声はもう少し低くて甘い。
髪の色は一段も二段も暗い。
年齢が、追いかける夢が違う。
私の手を取る利き腕が違う。


思うのは秀明のことばかり。


鳳のこの優しさは おそらく親切とか厚意からだけではないと思う。
それ以上の感情を抱いているのを、彼の表情からも言葉からも感じるのは、決して私が自惚れているのではない。


この人は自分の心にとても正直で素直なのだ。
気持ちを隠したり偽ったりすることができないのだろうと思う。


そんな素敵な人に、こんなにも大切にしてもらって
ストレートに好意をあらわにされたら……
悪い気はしないどころか、すごく嬉しい。

だけど・・・何かが違う。
比べてしまう 秀明と。
何かが足りない、と。

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