NY恋物語

なんでもヨーコの恋人は
このクリスマスに休暇が取れなかったらしい。
彼は米軍のグリーンベレーに属していて
クリスマスシーズンのテロに対する警戒の為に
VIPの護衛と主要空港を警備する任務が
入ってしまったというから気の毒である。
それが彼女の不機嫌に拍車をかけているようだと
苦笑いで秀明が話してくれた。


「ヨーコさん、恋人がいるの?!」
「…おかしいか?」
「おかしくはないけど…彼女はてっきり…」


秀明が好きなんだとばかり、と言いかけて
口を噤んだ。しかもその恋人が
グリーンベレーに所属しているなんて聞くと
ランボー紛いの屈強なマッチョマンを
想像してしまっても
方向としては間違っていないだろう。
同じ筋肉質でも秀明とはタイプが違う。
そうか。ヨーコさんはソッチ系が好みだったのか…。
私の見当違いも甚だしかったということか。


よかった、と心で呟いて
ほぅ、と小さく息をついた。


「なんだ?」

「何でもない。それより!
今夜のパーティは?中座したんでしょう?
大丈夫だったの?」

「ああ、大丈夫だ」

「本当?本当に?」


もしも私のせいで秀明の立場や評判が
悪くなったりしたらと思うと気が気でない。
さっき小さく湧き上がった不安な気持ちが
一回り大きくなった。


「本当だ。頼もしいピンチヒッターを
呼んでおいたから心配ない」

「でも…」

「俺が居るよりずっと盛り上がるはずだ」

「?」


文字通りアメリカンヒーローとなった
秀明の代わりが務まる人材が他にいただろうか?
「それは誰?」と問えば
なるほど!と納得する答えが返ってきた。

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