Liars' clovers
 クローバーを探しはじめていくらもたたないころだった。

「きゃっ……」

 短い悲鳴に振り返ると手の甲にのったカエルを凝視しているエミルがいた。

 つやつやした体の緑は、彼女の瞳の深さに少し足りない。

 小指ほどの生き物を前に彼女はひどく驚いているようだった。

「これは……何? かわいい」

 今度はぼくが驚いた。

 カエルをかわいいという女の子がいるなんて。母さんですらカエル見つけただけで一瞬身をすくめる。

「ねえ、何なの?」

 かわいいという発言に気をとられて質問を聞き逃していた。

 二度目でやっと反応するが、その質問もまたぼくを驚かせた。

「カエルだけど……知らないの?」

「カエル?」

 彼女はさらにカエルを見つめる。

 「……本で見たのと違うわ」

 彼女が見た本とは絵本のことらしい。

 その本に描かれていたカエルはこげ茶色でブツブツした体を持ち、人の顔ほどの大きをしていたという。

「えっと──そういうのもいるのかもしれないけど、これもカエルだよ」

「そうみたいね」

 納得したのかそれ以上何も言わなかった。

 慈しむようにカエルを撫で草の上に下ろすと、再び四つ葉のクローバー探しをはじめた。


< 19 / 34 >

この作品をシェア

pagetop