ナツメ
父親は、わたしを愛さなかった。

不器用に愛してくれていたのかもしれない。

でも、あれが愛だというなら要らないと思う。

母が死んで父親は文字通り男手ひとつでわたしを育てた。
育ててはもらったけれど、愛されはしなかった。

わたしに家事をやらせては怒鳴り散らす。
たった五歳の子供に家事なんてものができるわけがない。

でも父親はわたしにやらせた。

できないとわかっていてやらせては、失敗するわたしに怒る。
殴る。
罵倒する。
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