ナツメ
わたしが上手にできないから怒られるのだと、殴られるのだと、幼いながらに父親に気に入られようと必死だった。

そもそも父親に「気に入られよう」と考えるところから、もう間違っているが。


お前さえいなければ。

父親はよくそう言った。
その続きはわからない。

ただなにかあるごとに
「お前さえいなければ」。

いなければなんなのか。
いなければ俺はもっと自由に楽に楽しく生きられたとでも言いたかったのだろうか。
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