ナツメ
また。まただ。
ナツメの言葉が自分と同化していく。

そう。そうだ。
ナツメの言う通りだ。

引き裂かれたんじゃない。
別れさせられたんでもない。

わたしが諦めて手を離したんだ。


「ほら。もういいの? 諦めるの?」

嗚咽がもれそうになるのを必死に噛み殺して、ナツメを見上げた。


「…抱き、しめて…ください」

「いいよ。おいで」

広げられたナツメの腕。
その中に夢中で飛び込んだ。

ナツメの腕が背中にまわされて、ぎゅっと抱きしめてくれた。

心に水が浸透していく。

小さなオアシスが形成される。

ナツメという名の。
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