本気の恋の始め方
そんな私を見て彼は少しだけ表情を和らげると
「――」
それから私に何かを伝えようと唇を動かす。
「だめだよ、千野君。聞こえない」
そう応えると、彼は苦笑して。
そのまま自分で耳をふさぐ私の手の上に両手を重ね、私の手を握りしめ耳から引き離すと、ゆっくり顔を近づけて――
「俺はまだ、潤さんのこと、好きでいてもいいですか?」
と、耳元でささやいたの。
「え……?」
顔を上げると、千野君は相変わらずまじめな顔で私を見つめている。
「潤さん優しいから……俺のこと嫌いでも、そんなそぶり見せないだろうし。
それにこうやって笑ってくれると、俺、また勘違いしそうになるから、しないようにするのに、必死だし……」
そして千野君は、私の手を握ったまま手を下におろし、目をのぞき込むようにして顔を近づける。