本気の恋の始め方
ほんと、人懐っこいわんこみたい。
今日のメニューはミートグラタンとブロッコリーのサラダ、トマトのスープだった。
「いいにおい」
千野君のいうとおり、チーズが焦げるいい香りがキッチンから漂ってくる。
「俺グラタン大好きです」
「そう? よかった」
彼が口にする言葉は一つ一つはなんてことない言葉だけど、なんだか妙にくすぐったく感じてしまうのはどうしてだろう。
「そんなくっついてたら動けないよ」
なんだか照れてしまって、ウエストに回っていた腕をふりほどいてしまっていた。
彼とはその……そういうことをしちゃってるのに、今更だけどこういうスキンシップが恥ずかしく感じる。
耳まで真っ赤になってる自覚があった。
けれど私に手を振り払われた千野君は、特に気分を悪くすることもなく
「手伝います」
なんて言う。
「いや、いいよ、座ってて」
男の子だし、何か手伝ってもらうというのもピンと来なかった。