本気の恋の始め方

翌朝――



「こんなに持てないって。送ってくれたらいいじゃない」

「あら、今持って帰れば今日食べられるものばかりなのよ」



夜通し泣いたことに気づかれたくなくて、朝こっそりお風呂に入った私。


頭にタオルをかぶったままお風呂を出ると、キッチンでお母さんがたくさんのタッパーにおかずを詰めているところだった。



「塁君のぶんもあるのよ。一緒に持って帰ってもらったらいいでしょ」

「なに言ってるのよ。迷惑に決まってるでしょ!」



冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、コップに注ぎ一気飲みする。


のどを通り過ぎていく冷たいお水に肩をすくめていると、カジュアルなシャツにデニムに着替えたるうくんが姿を現した。



「おはようございます」

「塁君、おはよう。あのね、これおかずいっぱい作っておいたから。持って帰ってちょうだいね」

「はい、ありがとうございます……」



るうくんはテーブルの上の大量のおかずを見てちょっと言葉を濁しつつも、

「当分ちゃんとしたものが食べられそうです」

と、薄く微笑む。



< 323 / 446 >

この作品をシェア

pagetop