本気の恋の始め方
「さてと」
天まで届きそうな資料室の中を歩きながら、芙蓉堂(ふようどう)のゾーンへと向かう。
芙蓉堂は日本一の化粧品メーカーでお得意様でもある。
とりあえず過去10年の内容をチェックして、つかえそうなやつだけ持っていこうかな……。
ハンディスキャナーで資料を取り込みながら目を通していると、
「手伝います」
と、高いところから声を掛けられた。
見上げると、隣に千野君が立っていた。
驚きつつも首を横に振る。
「持って行くのに。それにもうこれで終わるから」
「うーむ。さすが三木さん」
千野君は苦笑して、スキャナし終えた資料ファイルを、元の場所に戻し始める。
すらりと伸びた腕、背中。凛と涼しげな横顔。
きれいな子なんだなぁ……
私服だとまだ学生っぽいと思ってたけど、こうやってスーツ姿の彼を見ると、ちゃんとした男の人って感じで、なんだか別人みたいだ。