ビターチョコレート
出会いはマドレーヌ
会社帰り、今日も大好きなケーキを買いに【star&mint】を訪れる
この店のケーキは本当に美味しくて初めて食べた時から通っている
色んな店でケーキや焼き菓子を買って食べ比べが趣味な私が一番美味しいと思った店がこの【star&mint】
パティシエさんも店員さんも素敵な男性で店に来る人はそれが目当てって女性がほとんどなのだろう
店に食べるスペースは割と多いけれどいつも混んでいて家でゆっくり食べている
その方が気が楽で良いんだけどね…
ー…あ!新作ケーキ出てる!しかも期間限定!これも買っていこうっと
私はミニケーキセットと新作ケーキ、合計20個を買って帰った

*-*-*

その一週間後
あれ…今日は混んでない?夕方にも関わらずいつも賑わっているのに…なんで?
もしかして今日はお休みなのかな?
店員さんいないし…でもケーキはある

「いらっしゃいませ、いつもありがとうございます」
『あ、あなたは…』
「はい、この店のオーナー兼パティシエの朽木勇人です」
『し、清丘美咲ですっ』

にこっとケーキの様に甘く優しく微笑まれてドキッとしてしまった
ダメダメ!私には彼氏いるんだから!…最近忙しくて会ってないけど!

『あの、今日…お店は』
「営業していますよ?」
『でも店員さんとか…』
「今日はサービスデーなんですよ。従業員がいつも来て下さっているお客様と一緒に街を見て回っているのです」
『へぇ…』

ケーキ屋さんってそんなこともしなくちゃならないんだ…
いや、この店ならではのサービスだよね
確かに【star&mint】の店員さんと一緒に歩けるなんていつも来ている女の子たちにとっては嬉しいよね

『えーと、じゃあマフィン10個とマドレーヌ20個と…』
「美咲さん、新作ケーキを試食していきませんか?」
『タルト5個セットを17個…え?』

手を取られて席へエスコートされて
とっても美味しそうなケーキが3個出てきたっ!すっごい…キラキラしてるっ
朽木さんが私の前の席に座り、ケーキをフォークで掬い私の口元に持ってくる

「どうぞ?」
『え、はい…』

私がフォークを取ろうとすると

「私の手から、食べて下さい」
『…え!?』
「さぁ、口を開けて?」

口を開けてって…
さすがに恥ずかしいんだけど…でも朽木さんは笑顔を崩さない
…やるしかないのかっ!
私は仕方なくフォークに乗っているケーキを食べた
…〜!!美味しいっ!!!どうしよう、これ売ってないのかな…っ

「喜んでいただけたようですね」
『はいっ!あの、これはまだ…』
「来週には出せますよ」
『予約お願いします!ここにあるケーキ3種類を15個ずつ!』
「ありがとうございます。そこまで可愛らしい笑顔を見せていただけるなんて嬉しいですよ」

うっわぁ…王子様スマイルってやつかなぁ…これは
うんうん、ファンが多いのも分かるなぁ
…あ!もうこんな時間!

『すみません、お会計お願いします!!マフィン10個、マドレーヌ20個、タルト5個セットを17個にチョコケーキ8個で!』
「はい、サービスデーなので半額させていただきますね」
『ありがとうございますっ!また来ますねっ』
「はい、お待ちしていますよ」

サービスデーってすごいな!
遠くから声が聞こえる
女の子たちと店員さんが帰ってきたみたい
うん、この店は賑やかな方が似合うと思う
おっと、帰らないと!
私はケーキを大切に持ちながら家路を急いだ
食べるの、楽しみだと思いながら
< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop