偏食家のテーブル
まだ日本が昭和と名乗る頃、ハルカはその家に流れてきた。まだ人生の右も左も上も下も見えない歳だった。ハルカの母にとってその家は今までと比べ楽園になる予定だったが、それから一年後、泡のように消えた。ハルカを残し。
主人の今野瀬武は残ったハルカを住まわせた。人質のように。ハルカの母が引き取りに来た時、また地獄に落とすために。そう、その家は地獄だった。誰か一瞬でも家族だった者はいただろうか。いや、いない。本当に血を分けた三人の兄達ですら、名家のプレッシャーから、仲が良いとは言えなかった。そして、もちろんハルカも心を開いた事がなかった。それどころか、腹が違う事を理由に、厳しい仕打ちに耐えねばならなかった。三人の兄達は、ストレスの受け皿にハルカを選んだ。主人のタケシもそれを認めた。名家の進むべき道を進むためには、多少の犠牲も必要だった。
そして、ハルカが中学三年の頃だった。高校の受験が控えていた夏に父が言った。
「オマエはどうやらデキン子だ。だけん、桜女子学館行け。」
桜女子学館は、全寮制でこの家から遠く山を何個か越えた隣の県にあった。
主人の今野瀬武は残ったハルカを住まわせた。人質のように。ハルカの母が引き取りに来た時、また地獄に落とすために。そう、その家は地獄だった。誰か一瞬でも家族だった者はいただろうか。いや、いない。本当に血を分けた三人の兄達ですら、名家のプレッシャーから、仲が良いとは言えなかった。そして、もちろんハルカも心を開いた事がなかった。それどころか、腹が違う事を理由に、厳しい仕打ちに耐えねばならなかった。三人の兄達は、ストレスの受け皿にハルカを選んだ。主人のタケシもそれを認めた。名家の進むべき道を進むためには、多少の犠牲も必要だった。
そして、ハルカが中学三年の頃だった。高校の受験が控えていた夏に父が言った。
「オマエはどうやらデキン子だ。だけん、桜女子学館行け。」
桜女子学館は、全寮制でこの家から遠く山を何個か越えた隣の県にあった。