偏食家のテーブル
しかし、ある放課後にハルカがユタカを呼び止めた。
「ねぇ!待って!田口さぁーん!」
ずいぶん遠いトコロからの声だった。ハルカの声だと気付いたユタカは振り返り、その姿を探す。
「ココ!違う!コッチ!」
どうやら見当違いの方向を見ていたユタカは、また探す。
いた。
校舎の二階の窓を開けて、ハルカが手を振っていた。
「アリガトウ!助けてくれてぇ!」
周りの視線が集まる。恥ずかしい。そもそも、助けてなどいない。むしろ差し出したのだ。だから、これは罰なのか?いや、ハルカの笑顔からは刑にあたる執行人の厳しさはない。あるのは無邪気すぎの笑った顔。彼女も忘れたのか?あの言葉を。
ハルカはどうも自分の言葉が、ユタカに伝わってないように見えたので
「あ〜もう!ちょっと待ってて!」
と叫び、姿を消した。おそらく階段を降りて、ココに来るのだ。ユタカは逃げても良かったが、周りの目があるのと、カナには言えなかった『真実』を、キチンと伝えようとハルカを待った。
一分もしないうちにハルカは現われた。額にうっすらと汗をにじませて、息をはずませて駆けてきた。
< 65 / 89 >

この作品をシェア

pagetop