偏食家のテーブル
「オレは東原。ミンナからヒガシって呼ばれるから、そう呼んで。イノとはもう二年くらい付き合ってんかなぁ。」
ヒガシは軽く自分を説明した。そして、ユタカの説明を待った。
「あ、あぁ田口です。猪野センパイの後輩です。」
「イノのねぇ…まぁいいっか。」
ナニが?と考えている間に、夕方のクラブに着いた。
「ココはオマエが遭遇したような事はゼッタイないから。行くぞ。」
イヤだった。ユタカは人生で必要のない経験は極力しない主義だった。あんな経験はもう二度としないと誓っていた。しかし
「ホラ、行くぞ。」
もう一度ヒガシが言うと、断る事の方が恐くなった。仕方なく足を踏み入れた。中は暗かった。音が爆発していた。そして、楽しかった。ヒガシはユタカをすれ違う人全員に紹介した。皆が知り合いのようだ。その知り合いの輪の中に入れたような気になって、その日は楽しかった。酒も少し飲んだ。気が付くと朝だった。
「どうよ?こういうの。おもしろいだろ?本来はこういうカンジなんだ。あの日は運が悪かった。それだけ。」
「ハイ。」
酒が入ったからか、ユタカの声がハッキリした。ヒガシがふぅんとうなずき、
「来週も来い。」
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