SoUnD~僕らの世界~
でも、来てくれるっていう可能性が、ゼロじゃないってことは、今の紗奈の言葉を聞いて思った。
ほんの少しの可能性にかけてみるのもいいのか、もな。
俺は家に帰って、夕飯と風呂を済ませてケータイを開いた。
未那にメールを送ろうと作成したのに、なかなか送信ボタンが押せない。
きっと今頃、未那は智さんと一緒にいる。
なら今はメールしない方がいいんじゃないか、という自分の中の思いが、送信ボタンの上に置かれ俺の親指を留まらせていた。
結局俺は保存フォルダにそのメールをしまい、ケータイを閉じた。
ベッドに倒れこんで、天井を仰ぐ。
そしてそのまま、気づかないうちに眠りについていた。
カーテンから差し込むはずの太陽の光が、今日は俺の部屋に届くことなく雲の向こうで明るく光っていた。
「・・・っやば!寝過ぎ!!」
急いで準備をして家を出る。
バス停につくと同時にバスが来た。
それに乗り込み、バスの奥へ。
未那を見つけて「おはよう」と声をかける俺。
そこで、顔を上げた未那の頬を、一粒の小さな滴が伝った。
「えっ、未那?」
今度は次から次へと頬を伝っていく涙。
そのまま俯いてしまった未那のスカートに、流れ落ちた涙が小さなシミをたくさん作っていく。
俺はとにかく未那の隣に座って、未那の肩にそっと手を置いた。
「未那?」