バージニティVirginity
サトルの飲むピッチは早く、玲はまだジョッキの半分ほどしか飲んでいないのに、1杯目を飲み干し、お代わりを頼むと言い出した。

「面倒だから、2杯頼んじゃお。
ダブルいきまーす」

室内のインターホンを使うサトルのこめかみの辺りから、汗が吹き出し、流れていた。

玲には適温だった。


「サトルくん、暑いの?」
からかうように言った。

サトルは玲をじっと見つめると、いきなり仕掛けてきた。


「玲ちゃんがあまりにもセクシーだから、俺、緊張してるんだ」

そういうと、サトルは玲の横にすっと座った。
熱っぽい目で玲を見つめる。


「ラウンジで初めて見た時から、すげー可愛いって思ってた。
俺、年上には興味なかったけど、
玲は特別。本当特別」

サトルは酔いのためか饒舌だった。

久しぶりにきく男の口説き文句。


「支配人とかマネージャーが玲に話しかけるのが、すげー嫌だった。
あいつら絶対やらしいこと考えてるし。あと、客も。玲が男の客と笑ってると玲、あいつのこと好きなのかな、とか思ってめっちゃ嫉妬してた…」


玲はサトルが何をいうのか楽しんでいた。

「そんなふうにいってくれるのサトルくんだけよ」

下唇を小指で触れながら、玲は流し目で言う。


独身時代、玲はこんな風によく男に口説かれていた。
玲なりに返事の仕方にもマニュアルがあった。

久しぶりに駆け引きする楽しさを思い出していた。


「…玲、抱けたら、俺死んでもいい」


サトルは玲の耳元で囁いた。

昔、そのセリフを玲に言った男が既にいた。

小娘だった玲はその言葉に感動し、
まだ無垢だった身体をその男に与えた。


「玲、こっち見て」

玲がサトルのほうを向くと、サトルは玲の唇に自分の唇を重ねてきた。
玲は抗わなかった。

サトルが玲を思い切り抱きしめた時、とんとん、とドアがノックされた。

「お待たせしましたあ」

茶髪の若い女の店員がビールの入ったジョッキを二つ届けにきた。

玲とサトルは一瞬、身体を離す。

店員が去ると、サトルは再度玲をきつく抱き締めた。

昂奮して鼻息が荒かった。

「玲…好き。大好き。愛してる。
キスしたかった。抱きたかった」

サトルはうわ言のようにつぶやきながら、玲を乱暴にソファの上に押し倒した。

弾みで玲は軽く頭をソファの背に打ち付けたが、サトルはお構いなしで夢中で玲にキスをしてきた。

サトルの汗が、玲の頬に滴り落ちる。

サトルが玲の体の自由を奪うように、全身の体重をかけてくる為に玲は苦痛を感じた。


サトルは痩せ型とはいえ、男の体は重かった。

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