あなたを抱けなかった理由
しばらくは、嬉しい気持でいっぱいだった私の体も、徐々につわりが始まり食事はおろか、水も飲めなくなってしまった。

医者からは入院を勧められたけれど、私たちにはそんなに経済的余裕がなかったので、通院で点滴を受けることにした。



彼は、日に日に衰弱する私を心配して、仕事が終わるとすぐに帰ってきて私のそばにずっとついていてくれた。



そんな私たちを見て、社長と奥さんに「子供が生まれたら大変だな」とよく笑われた。

私も、なんとか食べられる物、飲めるものを探そうと色々試したけれど、どれも口にすると吐いてしまい、食べられなかった。





そんな時、二人でボーッと見ていたテレビに「スイカ」が映り、私の食欲が刺激された。

「待ってて、すぐ買ってくるから」

「いいよ、もしかしたらダメかも知れないし」

「でも、試してみよう。食べたいって言ったの初めてじゃん」


そして、彼は財布を持って出て行った。
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