あなたを抱けなかった理由
「ハハ、確かに。花火見てもお金入らないよね。
って、バイト代2割増しって言ってた?俺、いつも通りなんだけど。店長に交渉しなきゃだな」



彼は、私の仏頂面を気にすることなく人懐こい笑顔でそう言った。


それから、花火大会で客足の多い日のコンビニは、目が回るほど忙しくて、バイトが終わったころには、その場に立っているのがやっとというくらい疲れていた。






「お疲れ。忙しかったね」

「あ、お疲れ様です。そうですね、疲れ過ぎてフラフラします」


「ありゃ、大丈夫?家この辺?自転車だから送ってこうか?」



彼が指さす先には、かなり古びたママチャリ
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