コワメンとマドンナ
人間だから当たり前だが笑う。喜ぶ。だがそれが顔の筋肉には伝わらないようで、他人にはただ不動明王が険しい顔をしているようにしか見えないらしい。
幼稚園児の頃、同じ年頃の子達は俺を見て泣いた。
みんな恐がって近づいてきてくれなかった。
『言うこと聞かないとツヨシ君に怒ってもらうからね!』
俺が卒園するまで、それが俺と同じ幼稚園に子を通わすお母さん達の脅し文句となっていた。
小学校、中学校に入るとこんな噂が広まった。
゛青山ツヨシは日本の四分の一を牛耳るヤクザの一族の若頭らしい゛
もちろんただの噂。父は市役所勤務のバリバリの公務員だし、家系的にも元は普通の貧乏農家でヤのつく人達とは少しも関わりがない。