学園スパイラル-女医の襲撃-

 その夜──

「! みなみ女医が?」

「ええ」

 カウンターの端でやや目を丸くした匠に、夕飯のロコモコを差し出しながら母のすみれが頷く。

「保険医のお仕事に熱心なのかしらね。健くんの怪我が気になるなんて」

 上品に笑う母に、匠はにこりと応えた。

 午後8時になった店内はすでに賑やかで、客の笑い声が響き渡っている。

「奥の佐藤さん、あと1杯で終わりにした方がいいね」

 食べ終わった匠が肘を突いて口角を吊り上げた。

 ジュースをコップに注ぎに来た父が息子の言葉に奥を見やる。

 店内には、カウンターの他に奥にはテーブル席と座敷席がある。
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